「いくつかな?」で発音練習
わたしの参加している日本語教室では、授業のはじめに「発声練習」をしている。
まえに人の名前や地名のイントネーションの違いを意識する発声練習の紹介をしたし、また北原白秋の「あめんぼあかいなアイウエオ」も紹介した。
もうひとつ練習しようと思っているのがある。数名詞である。
日本語の数を数えるのはとても難しい、日本人は別に特に意識しなくても簡単に読んでいるが、外国人にはこれがなかなか難しいのである。
たとえば
いっぽん
にほん
さんぼん
よんほん
ごほん
ろっぽん
ななほん
はっぽん
きゅうほん
じゅっぽん
なぜ、「いちほん」ではなくて「いっぽん」なのか「さんほん」ではなくて「さんぼん」なのか、「くほん」ではなく「きゅうほん」なのか、「じゅうほん」ではなく「じゅっぽん」なのか? 「ほん」になったり「ぼん」になったり「ぽん」になったりするだけでなく、そのまえの数字の読み方も「よん」「なな」「きゅう」になったり、「いっ」「じゅっ」とはねる読み方をする。
これは「いっぴき、にひき………」でも同じである。
これがものを数える数名詞ごとに異なっている。
人を数える時は
ひとり
ふたり
さんにん
よにん
ごにん
ろくにん
ななにん
はちにん
きゅうにん
じゅうにん
である。「いちにん」ではなく「ひとり」、「ににん」ではなく「ふたり」である。でも「さんにん」以降では数字に「にん」をつけるだけである。
日にちを数える時はもっとむずかしい
ついたち
ふつか
みっか
よっか
いつか
むいか
なのか
ようか
ここのか
とおか
つまり日本語の数の数え方には
「いち、に、さん、よん(し)、ご、ろく、なな(しち)、はち。きゅう(く)、じゅう」
という系列と
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここ、とお」
という系列とがある。
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ
いつつ
むっつ
ななつ
やっつ
ここのつ
とお
という数え方と
いっこ
にこ
さんこ
よんこ
ごこ
ろっこ
ななこ
はっこ
きゅうこ
じゅっこ
という数え方とが並列する。
これはもう音をまるごと耳で覚えるしかないようである。こう言うのは発音練習にむいているのであろう。
そのためによい絵本を見つけた。谷川俊太郎・さく 堀内誠一・え「かずのえほん いくつかな?」くもん出版の本である。
いくつかな?
かたつむり いっぴき さんぽにでかける
ちゅうりっぷ にほん にっこりわらう
こいしを みっつ のぼってすすむ
いったいなんだ あしが よんほん
ちょうちょが ごひき ひらひらとんで
あめになるけろ かえる ろっぴき
かさが ななほん あるいていって
ありが はっぴき あまやどり
きのこ きゅうほん あめをのみ
かたつむり じっぴき あめもあがって あそんでる1から10まで もういっぺん
かにが いっぴき よこあるき
かいがら ふたつ なみにゆれ
ねこが さんびき やめのうえ
ねずみは よんひき ちーずをかじり
おかのうえには おうちが ごけん
のはらにさいてる はなが ろくりん
ななわの ことりが そらをとび
こうまが はっとう のはらをかける
くにんの こどもが こうえんであそび
さかなが じっぴき おいけでおよぐ
傑作だと思う。日本語の言葉のリズムをうまくとらえ、堀内誠一の絵もまたとてもいい。