「少年讃歌」にアルキメデスの揚水機
「少年讃歌」という文庫本を読み終えた。
天正遣欧使節の4人の少年たちがヨーロッパ各地を訪問しているとき、スペインのトレドである大仕掛けの工事をトゥリアノというイタリア人の設計士に案内されて見に行った。こういう記述がある。
その工事というのは、タホ川の河水を450パレルモの高地へ導きあげている水道である。水道なら、前にもポルトガルのエヴォラで見たことがあるが、エヴォラの水道はただ遠くの清流を巧みに町中まで導いているだけの工事であった。
ところが、トゥリアノの水道は、川岸から町で一難高い広場まで長い階段が敷設されていて、その上に取り付けられた何本もの青銅製の導水管の中を水がするすると駆け上っているのである。
トゥリアノは。自分の工夫と技法を繰り返し私たちに説明してくれたが、私たちにはそれが十分に理解できなかった。川岸の、いわば水の取り入れ口に、小さな家が一軒ぽつんと見え、おそらくそこには技法のかぎと秘訣が隠されているのだろうと思って、たずねてみると、その家の中ではただ2輪の水車が回っているだけだという返事であった。
けれども、そこで水車が回っていたところで、なぜ水が自然に逆らって青銅の管の中を駆け上ってくるのか、やはり私たちには腑に落ちなかった。
この話を読んで、「ははーん、これはアルキメデスの揚水機だな」と思い当たる人はかなり丁寧に私のブログを読んでいる人であろう。
「少年讃歌」に書かれていることが、どれだけ実際にあったことなのか、どこから作者の想像なのか分からないのだが、これはきっと「見聞録」に書かれていたことによって書いているのだと思う。
この揚水機の不思議はいつまで見ていても飽きなかったのだが、今度「おもしろ科学たんけん工房」でこの模型を制作してみようと思っているのだが、果たして成功するかどうか?