鳥のさえずりが言語の起源
BigIssue160号に「特集 命の言葉を考える -「ことば」が生まれたとき」という記事が載っていた。
こういう特集が掲載される所が Big Issue らしい所であると思う。
動物が言葉を習得していくプロセスと人間が言葉を習得していく過程、つまり言語の起源を研究する文章があった。
一つは岡ノ谷一夫さんで、鳥のさえずりを研究することで言語の起源を探ろうとする。
もうひとつは子どもが言語を習得する過程を研究している今井むつみさんの文章である。
両方ともとても興味深いものであったが、ここでは前者の文章を紹介したい。
人間の言葉には4つの特徴がある。
発声学習ができる(まねができる)
音(単語)と意味が対応している。
文法がある。
社会関係の中で使い分けられる。
もっとも「この中の一つだけできる」という動物もいる。
厳密なヒエラルキー社会を構成しているハダカデバネズミというネズミは泣き声で互いの上下関係を察知する。
デグーというネズミは20種類ある鳴き声と「攻撃」威嚇」{あいさつ}等の意味を対応させている。
発声学習が得意な動物の例としては、人間が「ありがとう」と言えば「アリガトウ」と繰り返すことができるオウムや九官鳥があげられる。
発声学習ができる動物は、現在の所オウムなどの鳥類の約半数、イルカやシャチなどのクジラ類のうち最低2種、そして霊長類の内のヒトだけだ。チンパンジーやサルにはできない。
では「発声学習」ができるできないかの分岐点は? これが意外なことに自分で息をとめられるかどうか、呼吸をコントロールできるかどうかにかかっている。イヌやネコ、サルや馬などの他の動物は自分の意思で吸ったり吐いたりすることができないので、自在に泣き声を操ることもできず。結果的に発声学習もできない。
しかし、この4条件のうち「発声学習」と「文法」の二つをマスターしている生き物がいる。それはジュウシマツである。ジュウシマツのさえずりはかなり複雑な規則性をもった「歌文法」で構成されている。
ジュウシマツのオスは複雑な歌を歌うことでメスに自己アピールしている。
人類の初めにあったのは鳥のさえずりに似た「歌」のようなものだったのではないか。歌のような音の流れがまず先にあり、それを切り分けていくことによって単語(チャンク)ができたのではないか。歌から言葉が生まれたのである。
言語的にもっともすぐれている動物は、人間の次はジュウシマツなのか。そういえばジュウシマツもモノマネができる鳥だった。
モノマネができるには、息をとめたり吸ったりすることを自由にできなければいけないというのも発見だった。しかし、水の中で潜って生活している哺乳類は呼吸をコントロールできることになる。
ふ〜ん、なるほどね〜。
参考「ことばはなぜ生まれたのか」(文芸春秋社)「さえずり言語起源論」(岩波科学ライブラリー)いずれも岡ノ谷一夫著