「息が足りないこの世の息が」河野裕子さんの絶筆
10月12日の毎日新聞「詩歌の森へ」というコラムに「河野裕子さんの絶筆」の歌が紹介されていた。
本当は11種あるのだが、そのうちの5種だけだったのが残念だったのだが、いずれもすごい歌だなと思った。
死がそこに待つてゐるならもう少し茗荷の花も食べてよかつた
あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ
八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蝉の声降る
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
どうだろうか? とくに最後の「息が足りないこの世の息が」をよむと内からこみあげて来るものを禁じえない。
この人が選者をしている毎日新聞の歌壇の歌も楽しみだった。やはり選び出す視点が少し違って、選び出す歌もいい。
今の加藤隆氏もなかなかいいが。
毎週月曜日の歌壇の欄は朝日も毎日も毎週目を通すことにしているが、歌壇の欄は朝日よりも毎日の方が好きだ。
若山牧水賞受賞歌人の作品世界を紹介するムック版シリーズの第7巻「河野裕子」には11種全部のっているということなので、早速買い求めようと思う。