「千々石ミゲル」(青山敦夫著)を読む
「千々石ミゲル」(青山敦夫著 朝文社)を読んだ。
作者の青山氏は、「コンスタンティノ・ドラードの生涯」という本を書いた人である。ドラードとか千々石ミゲルとかキリシタン時代の人物でも、あまり取り上げられない人物に焦点を当てている所が興味深い。
とくにこの千々石ミゲルはキリスト教を棄てて、むしろ迫害する方の側に立った人物とされている。ここをあえて取り上げる所がいいと思う。主人公がなぜキリスト教を棄てたのかという所の分析がやはりこの本の中心的なテーマであろう。
ただし、著者はミゲルがキリスト教を棄てたのではないと書いている。
ミゲルが天正遣欧使節の他の3人から離れた直接的なきっかけは、伊東マンショと中浦ジュリアンが司祭になるためにマカオに派遣されたときに、ヴァリニヤーノはミゲルにはなにも知らせなかったことにあったという。
また「たま」という「顔の白いキリシタンの女性」との出会いもその要因となったとしている。
いろいろと調べていくとミゲルの妻となった「たま」という女性を描いた「マルガリータ(村木嵐著)」という小説があるらしい。今度この本も探して読んで見ることとしよう。
ちょうどこのときにミゲルのもとにはいろいろな人物が訪ねて来る。イエズス会とはライバルの関係にあったドミニコ会の修道士、天正遣欧使節の少年たちと共にヨーロッパに行ったメスキータ神父、そして不干斉ファビアンも訪れている。
そういえば「アジアの瞳」という映画では、中浦ジュリアンと千々石ミゲルとが対話している場面があった。学校にあったからあの映画をもう一度借りて見てみたいものである。あの映画にもなぜミゲルが棄教したのかが描かれていたように記憶している。