「ハビアン ー藍は藍より出でて」を読む

 前に「不干斎ハビアン-神も仏も棄てた宗教者」(釈徹宗著 新潮社刊 2009年1月刊)を紹介した。この人物には興味を持っていたので、大学図書館で見つけた「ハビアン ー藍は藍より出でて」(千草子著 清文堂 1991年刊)を見つけたときはうれしかった。

 『天草版平家物語』の作者である不干ハビアンは、“転びイルマン”の烙印をおされ数奇な運命を辿ったというということは前述のブログを見てほしい。
 この書の物語は、彼が著すキリシタン護教書『妙貞問答』に資料を提供する清原枝賢の娘「雪」を軸に展開する中で彼の人生を解き明かす。
 ただし、この書はハビアンが「妙貞問答」を書き上げるまでで終わっている。つまり彼がキリスト教をすてる場面はここにはない。

 この書の副題「藍は藍より出でて」は「妙貞問答」「神道之事」に出てくる言葉から取ったものである。普通は「青は藍より出でてて藍より青し」であるのだが、作者は原文のままを使っている。「藍」は「愛」に通じると思ったからであると述べている。
 著者は国語学者。国語学的に「妙貞問答」を研究しているうちにハビアンに引かれて小説を書きたくなったということである。

 ともかく、この書は続きが書かれなければならない本である。ハビアンがなぜキリスト教を捨てたのかというのが私の最大の関心だったのだから………。いつまでもこの本だけだと欲求不満に陥りそうである。

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