「しあわせハンス」グリム童話

ハンスはほうこうして7ねんたちました。
そこで主人にいうことに、
「くにのかあさんとこにかえりたくなりましたおきゅうきんをくださいまし」
しゅじんがこたえていうことに
「よくやってくれたからにゃ、たんまりやらねばなるまいよ」
そしてハンスのあたまほどある、きんのかたまりをひとつくれました。
ハンスはそれをふろしきにつつみ、かたにかついでたびにでました。
そこへ、うまにのったおとこがきました。
ハンスがいうことに
「うまにのるって、すてきだな。おもいきんなどもたないで、みちがどんどんはかどるもん」
おとこがうまをとめて、いうことに、
「どうだね、おのぞみというならとりかえようか。わたしがうまをやる。おまえさんがそのつつみをよこすことにして」
おとこはうまをおり、きんのかたまりをうけとって、ハンスをうまにのせました。
ハンスはしあわせいっぱいになって、きらくにのっていきましたが、
うまをはしらせようとおもいたって、
「はいし! はしれ!」とどなりました。
ところがはっとおもうまもなく、ハンスはうまからなげだされて、みちわきのみぞにおちました。
おりよく、とおりかかったのうふが、つかまえてくれました。
のうふはめうしがひいていました。
ハンスがいうことに、
「もううまはこりごりだ。けれどもあんたのめうしはいいよ。おとなしくうしろからついてくるし。まいにち、ミルクとバターをくれるしね。
そんなめうしなら、ほしいなあ」
するとのうふがいうことに、
「このうし、そっちのうまとかえてやるべえ」
ハンスは、よろこんでしょうちしました。
のうふは、すぐさまうまにまたがって、のっていきました。
ハンスは、めうしをつれていきました。
そのうち、のどがかわきました。
ハンスがこころでおもよう、
「さあ、めうしのミルクをしぼってのもう」
でも、牝牛はとしをとっていて、ミルクがひとったらしもでないところへ、ハンスがむりむりしぼったので、ぽんとひとけり
ハンスはひっくりかえりました。
ちょうどそこへ、ぶたをつれたにくやがとおりかかりました。
ハンスがひとりつぶやくことに、
「そうだ。ぶただったら、にくとソーセージがたべられるぞ」
それをきいて、にくやがいうことに、
「なあ、あんた、このぶたを、そちらのめうしととりかえてやろうかい」
そこでハンスはすぐにめうしをやって、ぶたのつなをうけとりました。
ハンスはたびをつづけながら、なにからなにまで、おもいどおりにはこぶなあとおもいました。
そこへ、こわきに、きれいな、しろいちょうをかかえた、わかものがきました。
ハンスは、
「がちょうなら、はねといいにくがとれるぞ」
とかんがえて
「とりかえよう!」
といいました。
がちょうをだいていくうちに、はさみとぎやにあいました。とぎやはうたをうたっていました。
「そうとも。とぎやになればたのしくなるさ。このといしいっちょうで、そうなれるよ。どうだい、そちらのがちょうととりかえてやろうか」
とぎやは、といしといっしょに、みちばたのごろいしも、おまけにくれました。
ハンスは、いしをふたつももって、まんぞくしてたびをつづけました。
とちゅう、いずみで、みずがのみたくなりました。
ハンスは、いしをいずみのふちにおき
かがんだひょうしに、いしはふたつとも、いずみのそこへおちました。
ハンスはおもわずよろこんで、おどりあがりました。こんなうまいぐあいに、おもにになっていたいしがなくなってくれるなんて、なんてうんがいいんでしょう。
「まったくぼくぐらいしあわせもんは、てんかにいないや」
こうして、」こころうきうきみちをいそぎ、ほどなくかあさんのうちにつきましたとさ。