親子の会話が楽しくって

「親子の日エッセイコンテスト」に応募したのだが、残念ながら選に漏れてしまった。それで、せっかく書いたのだからここで発表することにした。
 私はどうしてこの作品が選に漏れたのか、その理由がわからない。他の入選作品に比べても見劣りするものとは思われないんだけれど……………。

 いつもの朝おきぬけの親子の会話。
「いよさん、おっはよう。今日もいよさんといっしょだよ。楽しくって、楽しくって。」
「わたしゃ、ちっとも楽しくないよう。苦しいよう。」
いよさんは91歳、ちょっと心臓が弱いので、すぐに苦しくなる。
「いよさんは苦しくてかわいそう。でもいたるさんは楽しくって。」
「そんなのずるいよ。わたしゃ苦しんでいるのに楽しむなんて。」
「いよさんのためいき、つぶやき、なきごと、ぐち、みんな楽しくって。」
「うう〜ん。」
「そうそれそれ、その『うう〜ん』が楽しいんだ。」
「そんなに楽しいかねえ。わたしゃちっとものおぼえが悪くてぬけているからねえ。とんまなことばかりいっている。」
「『物忘れ名人』のいよさん、だ〜いすき。いよさんはいるだけで人を幸せにするんだ。」
「そんなあ。でもそういわれると悪い気はしないね。うれしくなるよ。さておきようかな。」
 いつもの食事前の親子の対話。
「さあ、いよさん、『ばばバーバー』をしようね。」
「『ばばバーバー』てなに?」
「ばあさんがする床屋(バーバー)のエプロンだよ。これをつけたら、ごはんつぶをボロボロこぼしていいんだよ。いたるさんは『ぼろこぼし』をみつけるのがだ〜いすきなんだから」.
「そんなの悪趣味だよ。人の失敗を楽しみにするなんて。」
「悪趣味といわれても、いよさんの『ぼろこぼし』チェックがだ〜いすき。人の楽しみを奪わないでね。」
 いつもの食後の親子の対話。
「さあ、いよさん、『ぼろこぼし』チェックの時間だよ。楽しみだな。いよさん、『ぼろこぼし』していないかな。」
「こぼしてなんかいないよーっだ」
「あ、あったあ。ごはんつぶをみつけた。たのしいな。もっとないかな。」
「もうないですよーっだ。」
「あれ、ほんとだ、もうないなあ。つまらないや。」
 この『ぼろこぼしチェック』のためか、いよさんがこぼすごはんつぶの量が格段にへったことは確かだが、私の妻はこの親子のやりとりをみて「何という親子だ」となかばあきれている。

もっともこの話はまえにブログに掲載したことがあるとおもうので、それがいけなかったのかも。
実は去年も応募したのだが、去年もダメでした。

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