ホスピスのレスパイト入院は生と死の混じり合った汽水湖

7月7日の朝日新聞 Be on Saturday の日野原重明さんの「100歳・私の証あるがまま行く」に「生と死が混じり合う人生の河口」という記事が掲載されていました。
そこでホスピスの「レスパイト入院」が紹介されていました。

 こうした中で有意義なのは、ホスピスやPCU(緩和ケア病棟)に短期間(1〜2週間)入るという新しい発想「レスパイト(respite)」入院です。英語で「現場を離れた一時的な精神の休養」という意味で、つまり患者は一時的な急速のために入院・入所し、そこで気持ちを整理して、いつでも死を迎えられる心の構えをするのです。
 英語にリトリート(retreat)という言葉もあります。日々の雑事から一時的に離れ、自然の中で心を洗い、生きる意義を感じることです。

 36歳の女性が、私の設立したホスピス、ピースハウス病院にレスパイト入院をしてきたことがあります。乳がんの手術を受けたあと、肝臓などに転移し、自分の命はそう長くはないと知ってのことでした。残される7歳と9歳の二人の男の子がそれぞれ20歳になるまでの、毎年自分の誕生日に「ママからのメッセージ」を渡せるように、それを画準備のために10日間入院したのです。彼女は2か月後、自宅でなくなりました。前日には美容院で髪をセットしてもらったそうです。
 人生という川の流れの行く先は、死という海です。河口の淀みは流れも緩やかで、海水が逆流し、生と死が混じり合います。ホスピスに入った患者は淀みの中で人生をふり返り、その先の生と死と向き合い、「まだやって行けそうだ」と思ったら、ホスピスから出て、「自分の死の終わりを作る」ことが可能です。レスパイト入院が日本で普及することを願っています。

 「レスパイト入院」を生と死の混じり合った河口の淀みにたとえたり、アン・リンドバーグの「海からの贈り物」をリトリートになぞらえたり、なかなかステキな表現です。
 カトリックの修道会が経営する「黙想の家」もこういうことを可能にする施設になることを望んでいます。

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