「脳科学からみた祈り」(中野信子著)読みました。

「脳科学からみた祈り」(中野信子著 潮出版社刊)を読みました。
著者は昨年6月にNHKFMの「トーキングウィズ松尾堂」に「脳科学で婚活」というテーマの時に出演していたのを興味深く聞いていたことがありました。

NoutoInori

内容は腰巻きに書いてあることでうかがい知れます。

「前向きな心、感謝、他人を思う祈りが脳細胞を活性化、免疫力を高める」
祈りの脳科学
*「よい祈り」を続けるとよい方向に変わる
*祈りこそ良薬 ——脳と免疫力の関係
*対話こそ脳を育てる最高の刺激
*利他行動で相手が変わるとき、自分も変わる

こんなことも書いてありました。

 さきに「『よい祈り』はベータエンドルフィンやオキシトシンの分泌を促し、そのことが記憶力の向上にも結びつく」と書きました。すなわち「よい祈り』は展望的記憶の強化にも役立つと考えられるのです。
そもそも祈りとは、本来、未来に向けられるものです。変えようがない過去に祈りを向けても仕方ありません。亡くなった方のことを祈る場合でも、私たちはその人の生命が未来に向けて安らかであるよう祈るものです。
祈りは「未来をよい方向に変えようとする営み」ですから、私たちは祈るとき、未来に心を向けます。将来かくありたい、かくあってほしいという願いが祈りなのです。だからこそ祈りという営みの中で、人はおのずと展望的記憶を強化していけます。
すなわち、脳科学から見れば、日常的に祈っている人ほど、展望的記憶をしっかりともっていきいきと生きることができるのです。それがポジティブな利他の祈りであれば、脳に与えるよい影響も強まって、なおのことよいでしょう。
東日本大震災の発生以来、日本中、世界中の人々が、日本のため、被災地のために祈りを捧げています。いまほど、日本という国が深い祈りに包まれているときはないでしょう。
そして、日本を含むその祈りが、この未曾有の事態を乗り換えていこうという未来への力強い祈りであるなら、ここまで説明してきたとおり、それは祈っている人の脳内を変え、心を変え、そのことを通じて人々の生き方をよい方向に変える営みへとつながっていくと言えるのです。

こんなことも書いています。「自分からは縁遠い他人のための祈り」とか「汝の敵のために祈れ」「迫害するもののために祈る」という「配慮範囲」のひろい祈りこそ「運を導きだし、幸福感を高める」とまで述べています。

 近年、京都大学の藤井聡教授が、心理学的アプローチから「運」の正体に迫(せま)った、「他人に配慮できる人は運がよい」という論文を発表しました。
これは、「認知的焦点化理論」というものを用いた研究です。「認知的焦点化理論」とは、かんたんに言えば、「人が心の奥底で何に焦点を当てているか?」によって、その人の運のよし悪しまでが決まってくる、という考え方です。
藤井教授の研究で、「利己的な傾向を持つ人々の方が、そうでない人々よりも、主観的な幸福感が低い」ということが明らかになりました。利己的な人ほど、自分は幸福でないと思ったり、周囲の人々に比べて不幸だと思う傾向が強い、という結果が示されたのです。
「認知的焦点化理論」では、どのくらい遠くの他人、そして遠くの未来のことまで配慮できるか、ということを「配慮範囲」という尺度で表します。
人の心の「配慮範囲」には、「関係軸」と「時間軸」があります。
関係軸とは、家族→親戚→友人→知人→他人という順に、心理的な距離がだんだん遠くなっていく社会関係のこと。
時間軸とは、現在→数日先→自分の将来→社会の未来という順に、思いを馳せる時間的範囲が広がっていくこと。
自分から離れれば離れるほど、範囲が大きくなります。
これが「配慮範囲」です。
利己的で自分のことしか考えず、目先の損得にしか関心がない人は、配慮範囲が狭い人です。
逆に、他人や遠い将来のことまで思いを馳せることができる人は、配慮範囲が広くなります。
藤井教授の研究によれば、配慮範囲の狭い利己的な人は、ある程度までは効率よく成果をあげられるものの、目先のことにとらわれて協力的な人間関係を築けないため、総合的にみてみると、幸福感の感じられない損失が多い人生となる、とのことです。
逆に、配慮範囲の広い利他的な志向を持つ人は、よい人間関係を持続的に築けるため、自分の周囲に盤石(ばんじゃく)なネットワークをつくることができます。
言いかえれば、周囲のみんながこぞってその人を助けてくれるわけです。
こうしてみると、よりたくさんの範囲の人、より遠い未来のことまで配慮できる人ほど運がよい、というのも、ごくあたりまえのことに思えてきます。

中野さんはクリスチャンではなさそうですが、しかし「祈り」の本質を捉えていると思いました。

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